失敗例から学ぶ飲食店経営

独立開業する際に飲食店が選ばれることが多い。初期投資が比較的小額で済むことと、業態になじみがあり、利用客の目線から開業アイディアを出しやすいためである。しかし、飲食店を含む外食産業は強豪ひしめく競争市場である。安易な考えでの参入は失敗を招く。そこで、飲食店経営で成功を目指す方に向け、失敗例を挙げながら成功に必要な要素を紹介する。

  1. 一貫性のあるコンセプトを重視する

飲食店経営においては立地戦略、店舗デザイン、商品ラインナップ、広告においてコンセプトに一貫性を持たせることが特に大切である。

ある店舗を紹介しよう。某高級住宅地のある私鉄駅前に手打ちうどんを売りとするうどん屋がオープンした。和のイメージを全面に出した店構えで、看板も「xx流手打ちうどん」と師匠直伝の技をふれこむ古風なものである。高級住宅地に住む裕福な年配層を狙った出店である。

しかし残念な点がいくつかあった。まず、外装に比べて内装が貧弱である。いわゆる「街の定食屋」のような内装で、壁にはテレビが流れている。これではうどんの味を静かに楽しみたいであろう裕福な年配層は来店をためらってしまうだろう。次に、来客の少ない時間帯に店主および店主の親族、知り合いと思われる面々がテーブルに座って打ち合わせをしている。打ち合わせをすることは良いことだが、営業時間中に、外から一番見える席で、関係者と思われる面々が打ち合わせをしている姿を見たら潜在顧客はどう考えるだろうか。客が来なくて暇そうだな、きっとおいしくないんだろう。または、店に座って打ち合わせをしてるから入店すべきでない時間帯なのだろう。そう考えて来店を控える可能性が高い。

このうどん屋は開店して半年になるが、未だに固定客がつかずにいつのぞいても店内は閑散としている。さらに残念なことに、「手打ちそば」も始めてしまった。問題があるのはうどんそのものではなく店舗コンセプトの不一致であるにもかかわらず(私も実際に味を確かめていないのでうどんそのものに問題がないとは言いきれないが)うどんに原因を求めてそばに助けを求めてしまった。
ちなみに、うどん好き、そば好きの客からは、うどんとそばを両方扱っている店舗は一段下に見られる。「うどん」を指名して食べにいく専門店から、うどんやそばを食べる「和麺」の総合店になるからだ。店の看板からイメージされる、師匠から技を受け継いだ自慢の手打ちうどんというコンセプトからどんどん乖離していることがお分かりだろう。

立地から導き出される潜在客層に対して、店舗デザインや広告にて来店機会を創造し、店内での応対、商品ラインナップによって購買、客単価が決まる。コンセプトに一貫性がないと客は購買までの段階でドロップアウトしてしまう。前述のうどん屋の例のように、真の原因に気づかずますます誤った方向に舵を切ることのないように気をつけるべきである。経営途中でコンセプトを軌道修正するとバランスをとるのが非常に難しいため、開業前にコンセプトをしっかり考え抜くことと、コンセプトを信じて飲食店経営をすることが大切である。